契約書のまめ知識<NEW>
以下のような事案に遭遇して思うのですが、多くの企業では、行政書士や弁護士
(契約書の作成はこの二者の独占業務で、他の者が行なうと罰せられます)という専門家に依頼して契約書を作成し、締結していないようです。
ですから、内容的にも何の契約書なのか、どのようなことを守りたいのか、どのような状況を想定しているのか…などがあいまい・不明確になっています。このままでは、あとで、思わぬトラブルに遭遇してしまうことでしょう。折角、契約書を作ったのに、効力がないということのないようにしっかりとした契約書を備えておきましょう。
特に契約の一般ルールと個別ルール、個別事情等に対応していないため、不完全な契約書で安易に契約を締結している場合が多いのです。
法定後見と任意後見の違い
いわゆる法定後見とは、痴呆等で判断能力が落ちた人に対して、家庭裁判所が認めた人に介護サービスの契約締結や預金の管理などの財産管理をお願いする者です。自分が痴呆になった場合には、あくまでも家庭裁判所が認めた人が自分の世話をしてくれます。
任意後見とは、将来、痴呆等で判断能力がなくなったときに備えて、あらかじめ自分が契約を結んでお願いしておいた人に自己の面倒をみてもらう制度です。この場合には、公正証書で任意後見契約を締結しておくことが必要です。一般に任意後見契約を締結しておくと、預金の管理や不動産の管理・処分、遺産分割、賃貸借契約、介護契約、老人ホーム入所契約の締結等をお願いすることができます。
自分が選んだ相手に身の回りの世話をお願いすることができる任意後見契約を締結するのは、とてもよい方法です。契約書の作成、お願いした世話の範囲等、介護経験のある当方がご相談にのらせていただきます。
契約の解除、解約、取消の違い
契約を解除するとは、契約を締結した後に、契約の当事者の一方が、相手方に対する一方的な意思表示によって、将来に向けて契約を解消することです。この場合、原状回復(契約がはじめから存在しなかったという状態に戻す。元に戻す)をする必要があります。
では、契約の解約という言葉と契約の解除はどのように使い分けられているのでしょうか?
契約を解消した場合に、契約を締結した時点までさかのぼって、初めからなかったことにするとなれば、受け取った金銭・物・受けたサービス等をすべて返すということになります。しかし、賃貸借契約(例;アパートを借りる契約)のように継続的な契約は、賃貸人(大家)が契約開始からずっと家賃を受け取っています。賃借人(アパートを借りた人)が契約を解消するからといって、契約解消時に今までの家賃を全額返すのは妥当ではありませんね。つまり、このような契約の解消は、過去にさかのぼって、すべてを元に戻すのではなく、これから先の契約をなくしたいといって、将来に向かって契約を解消することをいいます。
将来にむかって契約を止めるという効果のみを主張にしたいときは、通常「契約の解約」という言葉を使います。これに対して、「契約の解除」は将来に向かって解約を解消するし、契約締結時点の状態に戻す原状回復の義務までを主張したいときに使います。
それでは、契約の取消とは、何でしょうか?
契約の取消とは、契約締結時に「完全な」契約を締結していない場合(法的には、瑕疵ある意思表示・制限能力者の契約などがあります)に、のちにその不完全さを理由に、契約がなかったという状態にすることです。契約を取り消すと最初からその契約はなかったことになります。つまり、解除や解約とここが違います。契約は、いつからなかったことになるかという点です。過去までさかのぼるのか!これから将来に向かってなのか!ということです。
契約書を作るにあたり、解除・解約を使いわけましょう。そして、契約の取消という状況を招かないようにしましょう。もしも契約を解除したり、解約する場合には、その内容を相手に明確に伝える文書を作成することをお薦めします。いつから契約が解除されたかにより、原状回復義務に伴う義務の大小に影響がでます。
個人情報の漏洩
YAHOO BBやジャパネットタカダの個人情報漏洩が話題となっています。
私たちは、商品やサービスを購入・利用する際に、気軽に自分の住所・氏名・生年月日・電話番号・クレジットカード番号等の情報を提供してしまいます。しかし、一旦他人に渡った情報は、他人に管理され、改変されて、世間に渡り、自分の知らないところへと流出してしまうのです。
消費者が安心して物を買ったり、契約を結んだりすることができない時代が来たのでしょうか?
最近は、「企業が社員に対して、情報の漏洩があった場合に、責任追及をしたい」ということで、契約書の作成を依頼されます。しかし、注意しなければならないのは、契約書に「秘密保持義務」「情報漏洩の責任追及」等の条項を記載し、契約を締結したからと言って、情報を漏洩した社員に責任追及ができるわけではないということです。
社内において、誰でも容易にその情報にアクセスし、コピーできる状況であるのに、企業の機密を漏洩されたと主張できるわけではないのです。のちに、その社員に責任追及するためには、情報管理体制をととのえ、機密情報として扱っていたことが求められます。
ある企業では、情報管理体制がととのえられています。ある情報にアクセスすることができる人が限られていること、アクセスできる情報の範囲が明確であること、過去の情報を含めて、アクセス期限が設けられていること、アクセスした場合に、コピーや保存ができないことなど…があります。そこまで、ととのえても情報管理が万全といえるわけではありませんが、何らの体制を整えず、社員との契約書があるからといって、損害賠償請求できないということです。
当事務所では、通常、契約書の作成依頼を受けた場合には、契約書締結上の留意点等のマニュアルをおつけしております。契約書を作成すれば、完璧という事案などありません。その部分を補うために、サポートや相談体制を整えております。
契約書は題名で判断してはいけない!
最近、会社での就業形態・雇用契約も多様化しています。正社員・嘱託社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイト…等、企業が雇用の流動化として、法律上解雇することの困難さから、いつでもレイオフできるようにとそのようにしています。また、業務委託という方式をとる会社もあります。
雇用契約は、労働基準法等の保護が受けられ、有給休暇の取得、社会保険等の加入、退職金等様々なメリットがあります。しかし、業務委託契約の場合には、民法上の請負契約や委任契約とされ、雇用契約のような保護が一般にありません。
ある日、クライアントと労働基準監督署に赴きました。そのとき、となりの方は、労働基準監督署の担当者に契約書が「業務委託契約書」になっているので、不当解雇されても労働基準法の保護は受けられないですよ…というようなことを言われていました。ある日会社に言ったら、「明日から会社に来なくてもよい」といわれたそうです。労働基準監督署の担当官は、どのような内容の契約書であったのかも見ることなく、また詳しい話を聞くわけでもなく、単に労働契約(雇用契約)になっていないと判断したわけです。実質的には、おそらく、雇用契約になっていたことでしょう。
通常の雇用契約になっていれば、会社が労働者を解雇するには、「30日前に解雇予告をするか、30日分の賃金」を保障しなければなりません。この場合には、解雇予告なしの解雇にあたり、不当解雇になります。一般市民の方も担当官も充分に法律上の知識がないため、5分足らずの相談で諦めてしまったわけです。
決して、契約書の題名に惑わされてはいけません。
雇用契約と業務委託
使用者(会社)は、労働者が試用期間中だからといって、解雇予告が不要で、いつでも解雇できるわけでは、ありません。試用期間が2週間超えるときは、やはり解雇予告が必要になります。それでは、アルバイトとして、6か月の期間の雇用契約を締結した場合はどうでしょうか?雇用開始から6か月経つと、通常自動更新になっている場合が多く、複数回自動更新を続けると、その契約から、正社員と同様の保護がなされることとなり、やはり解雇予告が必要になってきます。では、契約期間を3年にしておけばよいと考えてしまうかもしれませんが、その場合はどうでしょうか?通常、労働契約は「期間を定めるなら1年まで」となっていますので、それ以上の期間を定めることは法律上困難なのです。